天体幻想曲
天から落ちた美少年


少年フェートンは、自分の父が日の神と聞かされて、日の昇る方へ旅を続けました。宮殿にたどり着くと、日の神はひどく喜んで、何なりと望みを聞いてやると言いました。フェートンは、太陽の車を走らせたいといい、止めても聞きません。それで日の神は、4匹の天馬の引く黄金の車に乗せてやりました。車が走り始めると、4匹はいつもと違って車がひどく軽いので、口から火をはきながら、けわしい坂道を駆け上り、金の車輪から火炎がもうもうと燃え上がりました。その熱で、まず北の空の大熊と小熊が火傷し、天の柱にからみついて眠っていた竜も目を覚ましました。車はもう空の天辺まで走っていて、フェートンはつい下を見下ろしました。下界は深い大気の底でまわっていました。それで、フェートンは思わず目が眩み、手綱のとりかたを間違えたので、馬はたちまち天の道からそれてしまいました。そのうち、ゆくてに恐ろしい大蠍が現れて、目玉をらんらんと光らせ、大きなはさみをひろげ、毒の尾をピンと立てました。フェートンははっとしたはずみに、手綱を取り落としてしまいました。こうなると馬はところかまわず走り出して、昼でも星の輝いている高い高い空まで駆け上がり、大地にぶつかるほど低いところまで駆け下りました。それで雲は真っ赤にこげ、地上に火山は火を吹き出し、川という川は水が乾いてしまいました。こうして天も地も猛火に包まれたので、オリンポスの山の宮殿から眺めていた大神も、これは捨て置けないと、雷電の矢玉を投げて日の車を砕きました。フェートンは放り出されて、火に引きながら、まっさかさまにエリダヌス川に落ちてしまいました。大川の水は、火に包まれた体を受けとって冷やしてやりましたが、もう生き返りませんでした。


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