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真・リレー小説

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裏切り吊るし

No.1841
開始 2004/12/02 20:55
終了 2005/12/02 20:55

1位.

微妙・・・

80.0%(4票)
2位.

面白い

20.0%(1票)

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投票期間:開始2004/12/02 20:55
投票期間:終了2005/12/02 20:55
BBS書込み数10件
投票者コメント数0件
投票者数5人
おすすめ者数0人

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[ BBSメッセージ ]
生け贄 (照山 紅葉)
ふと目が覚めると、外は雨だった。 今年大学を卒業する、大学4年乃木匠は雨を見てため息をついていた。 雨の音の中にどこか女の子の声が聞こえる気を匠はどこか感じ取っていた。 あれからもう10年が経った。どうしてあんなことをしてしまったのか、今でも後悔している。 匠はこれまであの出来事を片時も忘れた事はなかった。いや、忘れられなかったのだ。 「生きていれば、大学卒業か。」 匠は頭を抱え、ベットの上で呟いた。1階では母が朝食を作る音がかすかに聞こえていた。

生け贄 (照山 紅葉)
匠は大学に持っていく愛用ショルダーバックに小学校のクラス文集を突っ込み、下へ降りた。 すると案の定母が食卓に皿を運んでいる最中だった。 母は匠の姿を確認すると 「あぁ匠。おはよう。ちょうど出来たところよ、座りなさい」 とあごで匠のいつも座る席を指した。 「うん。」 と匠は階段を下りてからいつもどおり腰かけた。 だが、やはり雨の日はいつになく食欲がなかった。それは10年前のあの日以来か。 朝食をとっているときでさえも雨の音はいやらしく家に響いた。

生け贄 (照山 紅葉)
「匠、講義終わったんだけど」 匠はこの一言で我に返った。焦って辺りを見渡すとぞろぞろとみんな教室から出て行った。 「え、もう終わったのかよ。」 匠は急いでノートをめくり、黒板を見た。が、すでに講師は授業内容を消していた。 「なにやってんだよお前。あとでノート貸すからもう行こうぜ」 隣であきれた顔した大学での友人、滝澤晋太郎が匠を見ていた。 「ごめん。」 匠は本当に申し訳なさそうに言うのだった。 「お前なにそんなに考えてたんだよ。」 食堂でジュースを飲みながら晋太郎は言う。 「いや、別にぼーっとしてただけ。」 匠は晋太郎の目を見ずに答えた。 誰があんな話を信じてくれるんだ。 匠はそう思っていたし、あの7人で決めたんだ。 『このことは誰にも言っちゃいけないよ。加奈のためだからね。』 あの日の台詞が鮮明に、よりリアルに思い出されていた。

生け贄 (照山 紅葉)
匠はその日、大学から帰るその足で自宅から15分弱の位置にある、富士公園に向かった。 今日は11月20日。加奈の誕生日前日。 ただでさえ雨の日は気分が冴えないというのに、今日雨だと思うと体が重く感じる。 匠の透明ビニール傘から雫がポタッと落ちた。その雫の色が匠には赤色に見えて仕方がなかった。 いつの間にか富士公園の前に立っていた。雨だからか、子供、ましてや人っ子一人見当たらない。 さすがに不気味な気もしたが、匠は息を飲むと一歩一歩公園の土を踏みしめた。 住宅街に響く強い雨は匠を責めているようにも受け取れた。

生け贄 (照山 紅葉)
匠はこの広い富士公園の奥にある屋根つきの小さな休憩場所に腰を下ろした。 屋根のしたに大きい丸い木のテーブル。その周りにいくつか丸い椅子代わりの切り株。 どちらも手で触るとしめっていた。 「あーっ!今日公園誰も居ないよ!行こう行こう!」 10年前の小学6年生。 匠、加奈、翔太、綾香の4人は学年でも有名な男女混合仲良しグループだった。 そんな自分達の放課後の時間、ほとんどをこの公園で過ごした。 今でもその楽しかった時間一つ一つが頭に蘇る。 「ほら、匠。あそこにサッカーボールあるよ。やったね。」 匠の好きなサッカーをやって、とボールを笑顔で差し出す加奈。男女で特になんでも言える仲だった。

面白い (項目追加した人)
もうちょっと長くした方がいいよ

項目追加した人さん (照山 紅葉)
アドバイスありがとうございます。 切れるのが怖くてなかなか長くできないんですが なるべく長くしてみますね。 面白いて言ってもらえて嬉しかったです。

生け贄(6) (照山 紅葉)
富士公園で特に匠の印象に残ったものは匠の祖父が亡くなったあの日のことだった。 小学六年生の初夏。修学旅行が終了して間もない頃だった。 匠の祖父が死んだ。 爺ちゃんっ子だった匠は爺ちゃんが死んだと知ったその日無意識のうちに富士公園に来ていた。 匠の足取りはどこか重く今にも泣きそうな表情だった。 「やだよ・・・爺ちゃん・・・」 何回も呟いていた。もはや匠は何かに取り付かれているかのようだった。 次第にしとしとと柔らかい雨が降ってきてまさに爺ちゃんが泣いているかのようで。 匠は屋根下の切り株椅子に腰かけた。 「俺、じいちゃんいなきゃつまんないよ。」 肩の力が抜けて匠の体には脱力の文字がぴったりだ。雨のせいで子供が消え、水溜りができる。 自分もこんくらいの水溜りができるほど泣いているのだろうか。 その時、匠の耳におかしな声が聞こえた。

生け贄(7) (照山 紅葉)
「たくみーっ!なにしてるのバカーッ!」 匠はその声に反射的に振り向いた。視線の先には 「なんであたしを呼んでくれないの?」 と腰に右手を当て、怒っている加奈がいた。 匠は加奈の姿を見て一時固まったがすぐに涙を袖で拭いて 「なんでここにいんだよ。」 と普段のそぶりをしてみせた。 男は何故そうも他人に弱味を見せたくないのだろうか。それとも相手が相手だからか。 とにかく匠は強がって言った。 加奈は一歩一歩近づいてきて 「どっかの誰かさんがべそかいてるんじゃないかと思ってね。」 そう言いながらケタケタ笑った。 不謹慎な奴。匠は加奈の表情を見てそう思った。 ところが加奈の表情が一変した。 「匠、おじいちゃん大好きだったじゃない。」 真顔で匠の目の前に立ってまっすぐ彼を見つめた。 匠は加奈に全て見透かされた気持ちになってしょうがなかった。 でも、加奈の前では泣きたくなかった。

生け贄(8) (照山 紅葉)
匠はゆっくり目を開けた。 「そんなことも、あったよな加奈。」 あの時結局加奈の前で泣いちゃったっけ。 「匠。あたしの前でなら泣いていいよ。」 今もあの時の声の柔らかさ、衝撃が脳裏に焼きついている。 思い出せば加奈が語りかけてくるかのようだ。 「もう加奈はいないから泣いちゃ、だめだよな」 匠はそう呟いて目頭を押さえた。 テーブルに立てかけていたビニール傘はパタンと静かに倒れた。 そんな匠に10年前と似たおかしな声が聞こえた。 「匠ーッ!そこでなにしてるのアホーッ!」 思わず匠は背筋をピンとさせて振り向いた。 そこには・・・